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2007年5月27日 (日)

紹介: 「水からの伝言」に言語学の立場から反論する

まずはまじめな紹介

 既にいろいろなところで紹介されているが、言語学を専門とする方からの「水からの伝言」批判が現れた。「思索の海」というブログの記事 「水からの伝言」に言語学の立場から反論する である。

 詳細は当該記事を御覧いただきたいが、著者は

 音声や文字で表現される「言語の形」と、その「意味内容」は、 恣意的に結びついている

(たとえば「ワンワンと鳴く獣」という実体=意味内容には、「イヌ」「ドッグ」「コウ」「ケ」などの音声や「犬」「dog」「狗」 「개」などの文字を好きなように結びつけることができるのであり、 どれが結びつくのかは何の必然性もないことである。)

という言語学の知見に基づいて、

 ある言語表現の、その物理的性質(形)のみと特定の評価を結びつけることは原理的に不可能

なのであり、

 「意味」を受け取るためにはそれがどのレベルのものであれ、 受け手側が実に様々な情報、知識を持っていることが必須

と結論づけている。即ち、物質に過ぎない「水」が、「言語の形」と「意味内容」を結びつける膨大な情報をあらかじめ蓄えているのでなければ、 「どんな言語でもその価値を判断して結晶の形で表現する」ということは到底あり得ないのである。

 この辺は私も(そして多くの批判者も)漠然と気づいていながらなかなかうまく言語化できなかったことであるが、やはり餅は餅屋である。私の以前の記事で言い足りなかったことはほぼ尽くしてくれていると思う。

ここからはお遊び

 ところで、当該記事の

 水は万能の学習者で、実は人間と接するたびにその言語に関する情報を学習している、あるいは、 水はなんだかしらないけれども全ての言語に関する情報を備えている、というような道を選択しなければならないでしょう。

というくだりを読んで、ふとあるものが頭に浮かんだ。

 「全ての言語に関する情報を備えている」ものといえば、「あれ」は?

 食べるとどんな言葉でも理解でき、話せるようになるという「あれ」 は?

 「あれ」 の主成分は9割以上が「水分」 だったのでは……。

 その「あれ」とは、そう、(大山のぶ代の声で)「翻訳コンニャク」!

 コンニャクの成分の9割以上は水分で、その水は「水伝」の言うことが本当なら「全ての言語に関する情報を備えている」ことになるのである。だとしたらドラえもんの道具「翻訳コンニャク」もおとぎ話ではなくなってくるではないか。水に音声情報や視覚情報をうまく入力し、そこから翻訳された音声情報や視覚情報をうまく取り出し、脳にそれを作用させる仕組みさえ作ってやれば、「翻訳コンニャク」の完成である。ドラえもんが使ったものは、きっと「コンニャク」の水分以外の部分に、そういう仕組みをそなえた微小なチップが埋め込んであるのに違いない。

 もし「翻訳コンニャク」が実現できたら……。私の専門である中国文学をはじめ、外国に関する専門の研究者や学生にはこの上ない福音であろう。これまではまず「外国語の文献を正確に読む」ことから始めなければならず、それに大きな労力を割かれてきた。だが「翻訳コンニャク」を食べれば、もうそんな苦労は必要ない。本来の目的である作品解釈や史料解釈の方に全力を注げばよいのである。研究が飛躍的に発展することは間違いない。

 それ以前に、「翻訳コンニャク」さえあれば、あらゆる学校で外国語教育が不要になる。そうなればどれほど莫大なコストが浮くか見当もつかない。国からの予算を削りに削られ青息吐息の弱小大学もいっぺんに息を吹き返すであろうし、外国人の子弟の日本語教育に頭を痛めている小中学校の問題もきれいに解決する。もっと有意義な研究や教育に人員と予算がふんだんに振り向けられ、我が国は教育大国としての面目躍如となるに違いない。

 教育研究の場だけではなく、外交の場でも、外国語のニュアンスの違いによる行き違いはもはや生じなくなる。それに一般の外国人が言葉の壁に苦しんだり、言葉のせいでいわれのない差別を受けたりすることもなくなるであろう。 全人類の平和と発展に貢献する、ノーベル賞ものの大発明であることは疑いない(もっとも通訳や外国語教師は職を失うことになるかもしれないが、「翻訳コンニャク」の開発研究に加わっていただく救済策もあるだろう)。

 訳のわからない「波動測定器」を売るよりも、「翻訳コンニャク」を実用化した方が、確実に儲かる上に、よほど世のため人のためになるのではないか。それこそ「水伝」の掲げる崇高な理想にもかなうはずである。「水伝」で言っていることが将来科学的に証明されると本気で信じている皆様には、ぜひ真剣に検討していただきたいと思う。

 最後に勝手ながらリクエストを一つ。私は子供の頃からコンニャクが苦手なので、「翻訳コンニャク」では残念ながら食べられない。「翻訳ゼリー」か「翻訳寒天」も一緒に開発していただければありがたい(別に食べ物にこだわらなくても、水の偉大な働きをうまく取り出せて、携帯や装着に便利なものであれば何でもいいけれども)。

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