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2008年3月 9日 (日)

画面を離れよ、紙に出よう。――情報カード今再び―― (4)

■携帯メモ

 知的生産の技法は数あれど、それを継続する上で最大のネックとなるのは、アイデアやひらめきの捕捉にあるといえよう。知的生産の技法を説く本は、ほとんどメモ取りをこまめに実行することを説いている。梅棹忠夫氏は常時カードを携帯して、メモ取りもカードでやってしまうし(『知的生産の技術』pp.53)、野口悠紀雄氏は家中に反故紙の束を置いておいて、どこでもメモが取れる状態にしているという(『「超」整理法』pp.196)。ところがいざこれを実行しようとするとなかなか難しいのである。

 理由の一つとして、自分に合ったうまいメモ用具がなかなか見つからないことが挙げられる。携帯に便利で、どこで取り出しても苦にならず、書いた後でカードなりパソコンなりに内容を移し替えやすいものが理想だが、そのようなものがなかなか見つからず、試行錯誤を繰り返す羽目になる。

 そしてもう一つの理由は、メモを取る動機付けである。普段クリエイティブな仕事をしない人が、「なんか役に立ちそう」といった気持ちでいきなりメモ取りを始めても、なかなかうまくいかないであろう。「こんなことをして何にどう使えるのか」ということが自分の中でイメージされていないからである。もしこれまでに多くのアイデアやひらめきをみすみす逃がして、悔しい思いをした経験があるなら、その悔しさがメモ取りを続ける原動力になると思う。

 PoICでもそのあたりの事情への配慮はちゃんとされていて、カードは基本的に机の上で書くこととして、それ以外の場所で浮かんだアイデアを捕捉するために、野帳を持ち歩くことを勧めている。野帳はフィールドワークをする研究者や学生にとっては必須の道具で、硬い紙の表紙がついた、ポケットサイズの手帳である。表紙が硬いから野外で立って書くのに都合がよいし、実売120~140円と安価なのもありがたく、研究者以外の人にも携帯メモとして愛用する人が多い。

 私も学生の頃には、旅行に出るときには必ず野帳を持ち歩いて、旅程やら使った旅費やら、車窓から目についた風景などを克明に記録していたものである。おかげで列車に乗り合わせた年輩の乗客から、俳句の吟行と間違えられたこともある。しかし1995年頃から「超」整理手帳を使うようになると、野帳を持ち歩くこともなくなり、そして旅行の記録をつけることもなくなってしまった。今思えば惜しいことをしたものである。

 野帳の使い勝手の良さは捨てがたいものがあり、今回もカードとともにまた使ってみることも考えたが、これにはネックがあった。背広のポケットならまだしも、ワイシャツのポケットに入れるにはやや大きすぎるし、重すぎることである。

 私は夏場は基本的に上着を着ない。環境省が大々的に音頭を取るずっと前からクールビズをやっていたわけだが、そうするとポケットが少なくなるのが問題になる。しかもワイシャツの胸ポケットに物を入れると、肩が凝ってしまう。だから定期入れはズボンの前ポケットに入れている。見栄えは少々悪くなるが致し方ない。野帳もワイシャツのポケットに入れようものなら、確実に肩が凝って仕事に障るのである。

 そういう事情があるので、私にとっての携帯メモの条件は、

1.軽量
2.胸ポケットに収まる
3.筆記具を同時に携帯できる

ということになる。十年来愛用している「超」整理手帳は、スケジュールノートやA4プリントアウトのホルダーとしては非常に具合が良く、手放せないものだが、携帯メモとして使うには大きすぎるし重すぎる。何か思いついたらいちいちカバンから取り出して開くというのは、メモ取りという目的にはふさわしくないのである。

 「超」整理手帳もこのような声に応えて、最近ではA7判の「アイデアメモ」 を付属させるようになっている。これは薄型で軽量の、方眼が印刷されたメモ帳で、普段は「超」整理手帳に入れておき、必要に応じて手帳から取り出して別に持ち歩くというものである。これならワイシャツのポケットに入れてもあまり気にならないので、条件1.と2.は十分満たしているが、実はまだ問題がある。

 まず一つには「超」整理手帳本体からの出し入れが意外に面倒で、なかなか習慣づけられないこと、二つには表紙が軟らかいので立ったままで書くのに不便であること、三つには筆記具と一緒に持ち歩きにくいことである。

 この欠点を克服して利点を生かすには、軽くて機能的なカバーをつけることが考えられる。「超」整理手帳関連用品を売っているサイト「ノグラボストア」(リニューアルのため3月末で閉店)では、一流メーカーの革製A7カバーがいくつも出ているが、さすがに高価で手が出にくい。

 そこで職場で配布された手帳のカバーや、コレクトなどから出ている5×3カードホルダーを流用することも考えたが、幸い古くなった「超」整理手帳カバーを取ってあったので、これを改造することに落ち着いた。改造といっても大げさなことではなく、5×3カードがはさめる大きさになるよう上部を切断し、そうすると上辺のポケットの口が開いてしまうので、ビニールテープで止めただけである。とりあえずこれにA7メモと手帳用シャープペンシルをはさんで使ってみて、具合が良ければ本格的なカバーの購入も考えることにした。

 今の季節はコートを着るから、コートのポケットに入れて持ち歩くことにしたが、どこでもさっと取り出せて書けるというのはやはりすばらしい。急ごしらえのカバーとはいえ、使い勝手は意外に悪くないので、当面はこれでいろいろ試してみるのが良さそうである。A7ちょうどにせずに5×3サイズにしておけば、 余った部分をいろいろ活用することも考えられる。たとえば小型のUSBメモリーをマジックテープで貼り付けておくという工夫もあるだろう。気軽に細工ができるのが廃物利用のいいところである。
 (メモと一緒に持ち歩くなら、USBメモリーよりもSDカードやCFの方が薄くて具合がよいが、マジックテープを貼るとカードリーダーのスロットに入らなくなってしまうから、ちょうどおさまる大きさのポケットを工夫して作ってやる必要がある。)

 A7メモは「必要な時に手帳本体から切り離す」というのが本来のコンセプトであるが(『「超」手帳法』pp.136)、発想を逆転させて「必要な時だけ手帳本体に収納する」 ことにした方がよさそうである。会議などでは日程確認の必要から「超」整理手帳を必ず持参するので、その時にA7メモもカバーを外して、手帳にはさんでしまえば、どちらに書くか迷わなくて済む。

 A7メモの成功に気をよくして、家の寝室にもロディアNo.11のメモ帳を置いてみたら、これも結果は上々であった。書いたメモは出勤する時にちぎってA7カバーにはさんでおき、職場に着いたらA7メモに書いたメモと一緒にカードに転記するようにしている。転記が終わったメモにはチェックを入れておき、不要になったメモの紙は裏側を再利用すればよい。これまでみすみす逃してきたアイデアががっちり捕捉できるようになってくると、ますますメモ書きが面白くなってくる。 (つづく)

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